ロールスロイスやベントレー、フェラーリ、ランボルギーニなどハイエンドブランド(最上級)と呼ばれる車からスーパーカーの販売、メンテナンスを行っているコーンズは160年の歴史を誇る老舗だが、同社社員の顧客に対する姿勢に疑問を感じているという複数の投稿が寄せられており、この疑念にコーンズは真摯に応えるべきだという趣旨から取り挙げる。顧客が実感している不満や批判とは、スーパーカーのポルシェやフェラーリ、ランボルギーニ等の販売方法が耳を疑うようなものであり、またメンテナンスの料金が高いだけでなく、修理が完了した後に問題があってもクレームも受け付けないことにあるようだ。最初の見積もりと大幅に違う時には事前に報告することは当然であるが、それもしないことがあるようだ。

こうした話はなかなか表面化してこないものだが、実はコーンズを舌鋒鋭く批判していたのが、総合エンターテインメント事業を手掛けるエイベックスの会長、松浦勝人氏で、同氏はスーパーカーのコレクターとしても知られるが、同氏が自作のYouTube動画で自ら語っているところによれば、ポルシェの新車を買おうとした際に、コーンズの営業マンが「松浦さん、今年、新車を3台しか買っていないから…、後2台買って下さい」と口にしたという。続けて「買っても、すぐにウチが買い戻しますから」ということで、松浦氏は「お前たちのノルマのために買うのか」と呆れたという。営業マンの要求に応えなければ新車が買えないと考えた松浦氏は「じゃあ、買ってやるから全部売ってくれよ。そう言ったら、営業マンが『ポルシェ・タイカンを買って下さい』と言うから。ああ、いいよ、って言って買った。そしたらようやく欲しい車を売ってくれた」
松浦氏の批判は止まらず、続いてフェラーリについても「(コーンズが販売している車種の)全部を買ってくれる人に売るんだよ」という。つまり、新車が欲しくて買おうとしても、その顧客がコーンズの売上にどのくらい貢献しているかで売る、売らない、を選別しているというのだ。松浦氏は「どんなに怪しい職業の人間でも関係なく、コーンズは売上に協力してくれる顧客に売る。それで、全部買ってやると言ったら、イヤ、転売目的と取られるからやめた方がいいと言うので、どうしたらいいのかと聞くと、同じ車の左ハンドル3台、右ハンドル3台の6台買って下さい、と言って、すぐに買い戻しますからと言うんだ。しかしすぐに売れるかどうか分かりませんとも言うが、1億円で買って8000万円で買い取る、2000万円も損をし続けている顧客に販売する、ということだ」と怒りを露わにしている。話の流れからすると、松浦氏はコーンズでフェラーリの購入を止めたようだが、それも当然だろう。コーンズのような販売のやり方は呆れるどころか、コンプライアンスに抵触する、決してやってはいけないものだ。
こうした松浦氏の批判に対して「謎の投資家」と呼ばれる人物が別のYouTube動画で反論をしているので、それも紹介するが、新車や限定車は割当が限られ、日本には25台前後しか入らないために、それこそ顧客同士の取り合いという激戦になっているため、新参者扱いの松浦氏がいくら売ってくれと言っても回ってこないのは当たり前だ、文句を言う前に自分の貢献度を上げてはどうか、という。また、批判ばかりしていて、もしコーンズに嫌われたら、松浦氏が所有している限定車に不具合が起きた時に、整備をしてくれるのはコーンズしかないのにやってくれなくなる、と半ば脅しのような事まで言っている。しかしこれはコーンズ側に立った言い方で、割当の台数が限られているならば、例えば抽選によるなど顧客に公平公正な対応をするのが、そもそも販売する側の努めではないか。それを全く度外視して自社の売上に貢献する顧客のみを特別扱いするのはあまりにも度が過ぎた姿勢でしかない。

また、車の整備に関しても、最上級の商品を扱うには、顧客に対してもそれなりの振る舞いが求められて当然だが、ここで取り上げるMという社員は大きな勘違いをしているように思われる。
3年ほど前に、顧客が愛用車のうちの1台であるエンツォフェラーリの、全ての点検をコーンズに依頼して、点検には1年ほどかかったが、その後、車検は取ったものの一度も乗らないままでいたところ、バッテリーとガソリンを交換して乗ろうとしたら、エンジンがかかりづらかった。そうした中で、コーンズ(M氏)から車検整備の案内が来ていたことを思い出した顧客が電話をかけると、少し待たされ、受付の者が「Mは来客のため、折り返します」と言うので、一旦電話を切り待っていたが、30分以上も待たされた揚げ句に、長らくお待たせしましたという言葉など一切ないまま「Mですが」という一言だった。それが顧客への対応なのかと思った。
顧客が、車検の案内が来ていた事を告げた後、エンジンがかかりづらいことに加えてギアにも不具合があるので、どうしましょうかと言うと、M氏は一度は「車を引き取りに伺います」と言ったが、その後「部長に相談します」と言い換えたのである。それで、顧客が「取りに来てくれるのですね」と念を押すと、再び「部長に相談してから」と言いつつ「以前の事は終わっていますよね」と、まるで顧客を試すような言い方に変わった。顧客はM氏が何を言いたかったのか、瞬間、分からなかったが、すぐに前回の整備でトラブルがあったことを思い出した。確かにM氏が言うように、前回のことは終わったことではあるが、M氏に一切責任が無いことではなかったはずだった。
とはいえ、フェラーリの整備について、取り敢えず車を引き取りに来てもらえるのかと言う顧客に「いや、部長に相談してから」とM氏が言い出したことで、顧客も怒りを露にして、「どういうことですか? そちらで整備をしてもらった後、一度も乗っていなかったが、今回、エンジンがかかりにくくギアも入りにくいので、そちらで診て欲しいと思っていたが、それだけのことで何故、上司に相談するというのか」と問い質した。
「上司に相談する」を強調することで、顧客をクレーマー扱いしているように思ったのは当然だった。まるで自分の都合で客を選別するような応対をするM氏に多少は声を荒げる事にもなったが、M氏の対応を見れば、それも当然だったろう。しかし、M氏は態度を改める訳でもなく、同じ言葉を繰り返した。それで、顧客は「もう、いい」と言って電話を切ってしまった。顧客に納得できる説明をするべきではないかと思うのは当然である。

M氏が招いたトラブルというのは、エンジン周りの片方の修理で130万円くらい、左右両方でも160万円くらいでできると、車を搬入した2人の業者にM氏が告げたことにあったようだが、その後、約1年近く預けていた間にどのような修理をするのかという中間報告もないまま600万円の請求書が顧客に届いた。どの整備工場でも、作業の状況や経過を顧客に知らせるために写真に撮るなりして作業内容の説明をするものだが、M氏は一切しなかったので、いきなり600万円を請求された顧客も呆れる以上に多少の憤りをもってM氏に抗議した。すると、M氏は「自分には決裁権限がないので、部長に相談します」と言って、後日、M氏と上司の部長、顧客と顧客の友人の4人で会うことになった。そこで顧客の趣旨を知った上司がM氏の非を認め、請求額を100万円値引きする提案をしたので、金額的には満足とは言えなかったが、常識的な話ができる人だと思ったので、顧客は承知した。最初から部長のような人が対応してくれていれば、顧客がこれほど不快感を持つようなことにはならなかったに違いない、と顧客は思ったようだ。もしM氏のような対応をする社員が他にもいれば、コーンズの信用はガタ落ちになるだろうと思ったようだ。
メンテナンスチェックでも1回目の納車直後に上野周辺で停車した後にエンジンがかからなくなり、その後の修理でエンジンはかかるようになったが、それでも顧客は不安もあってその後は乗車を控えていたのだが、バッテリーやガソリンを換えて乗ってみることにしたところ、やはりエンジンがかかりにくくギアも入りにくかった。ただし、走行距離を見れば分かる通り一度も走っていないので、コーンズにはできればクレームでやってもらいたいという気持ちもあったが、どうしてもということではなかった。しかし、M氏はそのことを気にしたのか、「前のことは終わっています」と釘を刺すような言い方をしたのかも知れない。顧客はどうしてもクレームでとは言っていないのに、M氏が自分の以前のミスを意識し過ぎて一方的な言い方をしたことには本当に呆れたという。この電話での応対を見ても分かるようにM氏に個客に対する誠実さを感じなかった。

顧客はその後、相変わらずエンジンがかかりづらいエンツォフェラーリに乗る気がなくなり別の車に乗ることにし、駐車場に置いたままにしていた。ちなみに、同社が顧客に送った注文確認書(平成31年3月6日付 見積書)には「領収済」の印が捺されており、これを見ても手続きが大きく前後していることが分かる。顧客が費用を支払った後に見積書や請求書が送られるというのは、手順の前後で済ませられることではない。車の全体をチェックして、不具合のある所を一通り修理して欲しいという顧客の依頼に「エンジンの片方130万円ほど、両方であれば160万円くらいはかかります」と言い、さらに「修理期間を長くして戴ければ安い部品が見つかります」と言ったことに応えて1年近くも預けたにもかかわらず、ほとんど報告もないままで実際の請求額が600万円だったら、誰だって憤るのは当然だ。もっとも、これについては顧客も部長との協議により了解したことだが、その後、メーターを見れば分かる通り乗っていないのに不具合が生じれば、クレームでのメンテナンス処理はどの整備工場でも当然するのが相場なのに、M氏の対応は明らかに他とは違っていた。顧客は多くのスーパーカーを保有していて、車によって違う修理工場に入れており、試乗する時はまちまちだが、問題があれば整備工場がクレームで対応するのが当然だった。
こうした顧客の不満や怒りを、コーンズが放置することはないだろうが、早急な対処が求められている。顧客を知る関係者は「エンツォフェラーリ以上の車も数台、他にもスーパーカーを何台も所有しており、一時はランボルギーニだけでも数十台以上持っていたカーマニアです。これまで40年以上もスーパーカーに乗っているが、このようなことは初めてに近い」と言う。

1861年に横浜でフレデリック・コーンズがパートナーと創業し、昨年160周年を迎えた同社は、当初は絹と緑茶を輸出する貿易会社としてスタートしたが、今や、「先進性と高品質を企業理念に掲げ、自動車、一般消費財、アパレル、企業保険、海図、検査・海損、エレクトロニクス、産業機材と多岐にわたる様々な事業を展開しています」(同社HPより)を謳う老舗企業になっている。しかし、事業として取り扱っている商品がハイエンドブランドであっても、勤める社員が乱暴な販売方法を繰り返している営業マンや向山氏のようであれば、誰もコーンズという会社を信用しない、どころか扱っている商品にも最上級の価値を実感しないだろう。松浦氏が営業マンに苦情を言っても「本社の指示ですから」と言って、営業マンは受け付けなかったというが、それが事実ならばコーンズという会社の姿勢が問題になる話であり、会社としてどれほど成長性を誇っても、経営方針ばかりか社員教育がなっていなければ、企業は衰退することを忘れてはいけない。(つづく)