野村不動産の告知義務違反により、同社がそれを常習的にやっている悪質行為であることがより鮮明になった。当初、宅地建物取引業法の告知義務(説明義務)に違反するという、これほど悪質な行為を野村不動産が会社として容認しているとは思っても見なかったが、どうやらそうではなかったようだ。野村不動産では、利益を追求するあまりグループを挙げてコンプライアンスを無視しているやり方がいくつも明白になった。ここで取り挙げている野村不動産ソリューションズも、個人と法人を問わず物件の仲介をするグループの一翼を担っている会社であるが、野村不動産の表記で統一することにする。
一部の報道によると、物件の販売を仲介した野村不動産のセンター長が買主に仲介した物件でも説明義務違反を冒すという重大な違反を行っていた、と報じている。売買契約の場で重要事項を読み上げず、しかも買主に交付すべき書面も交付しなかったのだから悪質極まりない。
これは、地権者が被った被害と同じだ。地権者の場合には業務委託契約を結んで野村不動産との交渉を担うI建設が仲介した。また地権者の顧問弁護士が契約書ほか手続きの法的な部分をチェックする役割を負っていたが、それでも野村不動産は、それをすり抜けるような有り得ない悪質なやり方を駆使しており、法的にも許されないことである。
話を戻して、買主が野村不動産と媒介契約を結び売買契約を結んだ後に、センター長が、ビルのテナントの立ち退き交渉の業務を業者に委託すると称して、買主にその業者と8億5000万円の業務委託契約をするよう要請したが、買主が不審に思い断ると、事態が急変して他者が物件を購入してしまった、と連絡してきたという。それだけではなく、野村不動産は媒介契約に基いて仲介手数料の支払を求め買主を提訴したというのだ。
買主との間では売買が成立しなくても、仲介料を求める権利はあるというのが野村不動産側の言い分だったようだが、買主とは別に二股も三股もかけて交渉を進めていたことを野村不動産は隠し、しかも他者に売却したうえに買主に仲介料を請求して訴訟まで起こすなど、まさにコンプライアンス違反ではないか。
訴訟はなぜか一審で買主が敗訴し、これを不服とした買主が控訴する中で、前述した野村不動産側の説明義務違反と書面交付義務違反が判明した。野村不動産が売買契約に係る重要事項の説明を買主にしなかった理由の詳細は分からないが、少なくとも売買契約を結んでいたのに、他者に売却できるはずはないから、センター長はそれを隠すために重要事項の説明もしなければ書面の交付もしなかったことははっきりしている。
地権者の場合も、野村不動産は契約書の原案にあった条項を勝手に削除したうえに、変更後の契約書を交渉経緯の詳細を知らない弁護士に送信しただけで必要な説明もせず、さらに地権者とI建設にも契約書の開示も一切しなければ口頭での説明もしなかった。これは野村不動産による事実上の改ざんである。こんなやり方が許されていいはずはない。
また、これは契約書の原案にもあったが、売買に伴う固定資産税と都市計画税の地権者と買主の負担について記した条項について、地権者は土地と建物を同時に売却するので、当然、土地と建物それぞれにかかる固定資産税と都市計画税を合算して負担割合を算出しなければならないのは当然のことだが、野村不動産は密かに建物にかかる固定資産税と都市計画税を除外すると契約書に明記し、それを地権者にもI建設にも一切説明しなかった。
契約日直前の前日夜半に顧問弁護士に条項を削除した契約書の原案を送り付けただけで詳しい説明を一切しなかったことを、野村不動産の橋爪も橋本も何一つ悪びれていなかった。本来なら、告知義務違反を厳しく問われることを、橋爪と橋本は都合の悪いことは一切無視したが、そんなやり方が許されるはずはない。
また、固定資産税と都市計画税の買主側の負担分について、契約書に建物にかかる固定資産税と都市計画税は除外することを明記していながら、一言も触れなかったのは明らかに告知義務違反だった。地権者が気づかなければやり過ごしてしまおうとするようなことは、悪質さの度が過ぎており、あってはならないことだ。
野村不動産は、地権者の顧問弁護士に契約書の原案を送り、確認を戴いていると強調するだろう。しかし、条項の削除という重大な変更を、経緯を含めて説明しなければ、顧問弁護士は契約書の字面を追うくらいしかないことを見越して、わざわざ契約日の前日、それも午後8時過ぎという夜半を選んでメールで送信したことが、説明義務を故意に回避した証ではないか。
地権者が、固定資産税の買主側の負担分について疑問を持ち、顧問弁護士を介して野村不動産に問い合わせをすると、橋爪は1週間以上も連絡せず、ようやく連絡を入れて来た時には「契約前に説明した」と言うだけで、買主側の負担分に、建物にかかる固定資産税と都市計画税を加えることを拒否したのである。橋爪の言う通り、契約前に説明があったなら、顧問弁護士からの問い合わせにすぐに応じて、説明した経緯を返答したはずだが、橋爪はなかなか連絡をしなかった。恐らくどのように回答するかを社内でさまざまに検討していた、とさえ思われる。
野村不動産により契約書の原案を勝手に改ざんした部分は、地権者が保有する車両10台を一括保管する駐車スペースの確保に関わるものだった。これは、地権者が売買の条件として最初から提示していたもので、一括保管の駐車スペースを確保するのは難しかったことから、決済の予定日までに見つからなければ決済を2か月ごとに延ばし、半年後の年末でも確保できなければ、一旦契約を無条件で解除するという条項が明文化されていたのに、それがそっくり削除されたことで、地権者には非常に不利な状況となった。
これに対して、地権者が契約解除の意思を伝えて、野村不動産とI建設を交えて重ねた協議の場でも、橋爪と橋本、そして2人の上司である徳吉はそれぞれに責任転嫁を繰り返し、平気で嘘をつき続けた。もし、地権者が交渉を委託したI建設の事情を配慮しなかったならば、地権者は間違いなく契約を解除していたに違いない。
決済を先延ばしにした上に条件が果たせなければ契約を無条件で解除するという条項は、利益の追求にしか関心のない野村不動産にしてみれば、大きなハードルだったかもしれないが、だからといって地権者には何の説明もせず、変更された契約書を見せることもしなかった行為は、詐欺にも等しい。建物にかかる固定資産税と都市計画税の除外を明記した条項も一切説明しなかったことを踏まえれば、野村不動産のやり方は過失ではなく、明らかに計画的と言わざるを得ない。地権者は改めて野村不動産と買主に対して、野村不動産による宅地建物取引業法の告知義務違反を前提にした訴訟の提起を準備中という。
野村不動産は新卒者向けの自社ホームページで「何がお客様の心を動かすのか。
それは、営業一人一人の人間性と信頼の積み重ねだと考えます」と高らかに謳っているが、実際の現場でやっていることは全く逆だ。しかも、同社の全営業マンが上司や先輩から徹底的に叩き込まれるほど組織ぐるみでこのようなやり方をしているとしか考えられないだけに、売主も買主も野村不動産と関わる時には弁護士に相談することは必要不可欠で、よほど慎重に構えなければ、絶対に被害を受けることを肝に銘じておく必要がある。不動産を数多く所有している地権者もまた、今後いかなる時でも取引に野村不動産が関与したら、一切売買しないと決断したようだ。野村不動産が業法違反を巧みにすり抜けてでも全社を挙げて利益追求に走っているのは明白であり、実際にこうした被害にあった件数の多さには驚くと同時に、それこそが、野村不動産の上層部より平社員に至るまで悪質すぎることの確固とした証明にもなるに違いない。(つづく)